ZARDを聞いている

 不眠気味で録画しているテレビを見ていた。早見あかりがモモクロ代表で出ていた、ダウンタウンDXだ。いつまでモモクロなんだろうと疑問に思いながら悶々と過ごし、研究と仕事のことを考えていた。明日は研究補佐員の仕事で打ち合わせがあって滞りがちなプロジェクトの報告とスケジュールを引く必要がある。そのプロジェクトでは外部の作業員が多くいて、一番給料が安く年若い僕がアカデミックなので意味のあるデータなのかの確認やテストを行う事になった。学校から帰る前に打ち合わせ用のドキュメントを用意したが、スケージュールは過密になるだろう。そんなことを考えていたらテレビなんか見ていなかったのに曲が耳に入ってきた。ポカリのCMだ。ZARDだ、坂井さんだ。

 ZARDがデビューした頃、僕は小学生だ。世間は阪神淡路大震災で暗いニュースが多かった。特にファンではなかったが、どこでもZARDは流れてた。誰でも知っていた。
ZARDの曲を聞くと思い出がダ~っと流れ出す。大半はどうでもいいことばかりだ。
兄のゲームボーイを後ろから覗いて怒られたとか、姉の部屋の絨毯にボンドをこぼしたとか。お母さんとかき氷を一緒に食べたとか、そういうのだ。

 僕は高校受験に失敗して高校でたくさん勉強した。本当にたくさんだ、友達が帰ろう帰ろうと言っても無視して教室で放課後に一人で勉強した。その時もZARDの曲を出たばかりの無理して買った128MBのデジタルオーディオプレーヤー入て聞いていた。担任にそんな物高級だから持ってきてはいけませんと言われたのだ。当時から坂井さんは可愛くて、でもテレビには出なくて、ネットもそんなに見ない時代で、ZARDの歌っている人が可愛いなんてそんな事考えたこともなかった。それくらい自然だった。

 僕は大学に合格して、しばらくして麻疹が大流行して1ヶ月ほど休みになり、その間だったろうか坂井さんが亡くなったニュースを知ったのだろう、休校明けの授業で教授が「人を励まし続けた方がなくなりましたね、坂井さんです。」と覚えている。大教室の授業でソフトパワーとハードパワーを世界情勢から読み解くと言った内容だったと記憶している。当時は楽しいことややりたいことがたくさんあって、でも時間はたっぷりあったのに、あまり深く感じることがなかった。今から思い出すと人間として未熟だったのだと思う。だけど、やはりびっくりするほど明確に思い出せる。今、振り返って僕はZARDが好きなんだろうと思う。

 今日は、もうこんな時間だ。今日は遅刻できない。僕が18の頃はいくら遅くまで起きていても朝走って登校できたし、集中して勉強できたのに感じ入ることはできなかった。今は噛み締めたい思いがいっぱいあるのにもうそこまで楽しめる時間がない。

 坂井さんの歌を聞くと今でも励まされる。ごく自然に気がつくことも少なくに。僕の好きな小説に「平易な言葉を使えますね、文章の才能がありますよ」というものがある。専門用語に忙殺されそうになるけれど、平凡な言葉なのに新しさがあって身近さがあってゼロ距離で自然の生身さが好きだ。僕はファンじゃないけれど、まだ歌を聞いています。

 僕も平凡な言葉で声や文を見て聞いて読んでくれる人に励ましを送ったりしたい。自分の好きな人が元気になってほしい。

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